アメリカ建築史はアメリカ大陸上の民族移動の歴史と重なる、と私は思うのです。
500年余り前コロンブスがこの大陸を発見してから、イギリス人、フランス人、ドイツ人、オランダ人などなど幾多の国の人々が新天地を目指して入植した。
海を越え未開の地で暮らす彼らは衣食住の一切合財を船に載せてやってきた。着るもの、布と針。食べるもの、とりあえずのパンと蒔く種。これらは簡単に船室にしのばすことはできたけれど、さすがに「住」の家、こいつぁかさばりすぎましたでしょう。だから自国で建てられている家の作り方「設計図」を持ち込んだ。
東海岸から入植した民族は西へ南へと移動し、その道中で異国間の男女が恋をし結婚をする。体に流れる血筋も混じり合っていくように、おらが国の「設計図」も交じり、伝統がデフォルメされていく。
民族移動の足跡に建築史がすっぽりと重なる。こんな国、きっとアメリカにおいて他にはありませんでしょうなぁ。
2011.6.20 Kiyoshi Nishinomiya