2011
Sep 20
(The)

大橋さん家の犬


 去年の夏に竣工した大橋さんの家に犬がいた。今まで犬がいたとは知らなかった。聞けば、かれこれ半年ほど前から飼っているという。
 すこぶる人なつこい。見知らぬ人が近づいてもうんともすんとも言わない。だから、今まで気づかなかったのか。まず番犬の素質はない。疑うことを知らない。私もかくありたいと思う。いちずに迷わず日々生きている様子。
 「一を抱き、天の式となす」とは、老子第22章。
 たとえ多才な能力を持ち合わせていたとしても、迷うことなく、ひとつの道を積み上げ努力していけば、きっと世の中のお手本になる、との教え。
 大橋さんの家の犬は何を努力しているのか、それは謎だが、人生に迷い戸惑いはみじんも見られない。
 「小太郎」だか「小次郎」と呼ばれていたが、「小梅」「小雪」と呼ばれたって、きっと、振り向くに違いない。

2011.9.20 Kiyoshi Nishinomiya