太田さんの家の全体にフクビ遮熱エアテックスが貼られた。曇り空の下で見ても、アルミ膜がNASAチック、銀紙チック。
ピンク色の弊社ロゴが時ならぬ2.14バレンタインデーのチョコレート思わせる。
バレンタインデーといえば、私、遠い過去の青春の話もありました。
私の生まれ育った家の3軒隣りが桑田圭祐くんの家。大学時代、桑田くんはすでにスター。バレンタインデーの日には家の前に朝からずらりとファンの女の子たちが並ぶのですよ。大学に行って、チョコなしの空振りに終わったその日の夜に戻っても、まだ、ひとり立っている。
「もう時間切れだから、あきらめたら」と忠告したら、
「しょうがないから、あんたにあげるわよ」と。
当時人気のファッションモデルの山口小夜子を気取ったボブカットの女の子。好みの娘でしたねぇ。でも、桑田くん用のチョコを、何も言わずにもらうわけにもいかないじゃありませんか。
「11個目だよ、今日は。それでのよけりゃ、もらってやるよ」
加えてお調子に乗って、言わなきゃいいことを。
「勝手にシンドバッドは、オレをモデルにして圭祐が作ったんだよ」
その夜、私は、劣等感、焦燥感、罪悪感だとかがいっぱい充満した自分の部屋で、チョコレートの包み紙を開いていたことを、思い出しますなぁ。
2011.10.04 Kiyoshi Nishinomiya