
井田さんの二世帯住宅は3階建てだ。建築基準法に2階建て用の構造では通らず、より強固な基準で作ることが求められる。だから、コストが、うんと高い。
加えて井田さんの家の3階は贅沢な防音室仕様。親世代のご主人がバンド仲間と練習する部屋になる。防音ドア、壁、天井の三拍子。ワルツ。またコストが、うんとはった。
建築中ではあるけれど、親世代のご主人はその3階にのぼり、試しに、うわっうわっと、叫んでみたが、階下にいた親世代の奥さまにその狂喜ぶりは届かなかったという。
特に天井材・商品名「オトテン」の音の吸収率が優れている。シャットアウトするのではなく、スポンジのように吸い込む効果。
親世代のご主人はその効果に感激のあまり、自らのバンド名を「オトテンバンド」と改名し、ほぼ3階から降りない生活を考えているという。
2013.2.02 Kiyoshi Nishinomiya

Tさんへの3番目のプランは没になった。
ラップサイディングを基本とし、2階の張り出しの部屋を、柱を浮き彫りにしたチューダー様式に飾った。一級建築士の細井ちゃんと二級建築士の私は自信があったが、Tさんの奥さまが、なんとなくログハウスぽい雰囲気に首をかしげたからだった。
細井ちゃんは狙いをはずしたことに、思わず、ごくりと、ツバをのみこんでいた。
まだ3番目のプランでしょ、5番目、6番目あたりで決めていただければ。ねぇ、Tさん。
と、私はTさんご夫妻と細井ちゃんを広角に見たが、細井ちゃんは体を硬直させたままだ。
この差である。細井氏は一級建築士だが、私は二級建築士と宅地建物取引主任者のセット。
私の方が年収が高い。
A物件はお気に召しませんでしたか、いや実はね、とっておきのB物件があるんですが、それはまたご案内しましょう。
不動産屋的あいまいさ。
容積率、建ぺい率、天空率、斜線制限などに苦心惨憺の細井ちゃん。彼も宅地建物取引主任者の資格を取ったら、心も軽くなるはずだ。
2013.2.01 Kiyoshi Nishinomiya