2012
Oct 20
(Sat)
青いクレマチス

そういえば井村誠(いむらまこと)が言っていたことを思い出した。
「素人のおまえがバラのお世話なんかまだ早いね。どうしてもと言うんなら青いクレマチスから植えるんだね」
去年の秋、熱海であったプロパンガス組合の宴会の席でだった。お互いお酒も相当飲んでいた。きれいな芸者のお姐さん方もいた。こんな会話が弾むはずもなくそこで話題は途切れていたが、「青いクレマチス」が記憶の糸に絡んでいた。
先日、注文するバラの苗木をピックアップしていたら青色系のバラに目がとまった。バラといえば赤、ピンク、白が一般的。青いバラは元来性質が弱く初心者には向かないとの注釈。一般的な色のバラに青いクレマチスを混在させるとバラの庭が引き立つとあった。青い色素はバラの成長と相性が悪いのか。
ちょこざいなのは井村誠だ。かくも先を読んでいるとは。
ほくそ笑む井村誠の浮かんだ顔を消すため、私は青色系のバラ「インディゴレッタ」を注文票に書いた。
2012.10.20 Kiyoshi Nishinomiya


いつか井村誠(いむらまこと)が言ったことを思い出した。
井村誠とは同い年のプロパンガス販売店のあととりである。かれこれ20年旧知の間柄だが、顔を合わすたびにお互いけなし合っている。私だけじゃない、おおかたの人間ともそういう仲だ。
その井村誠が、「バラの黒点病には竹酢(たけず)が効くよ」と言っていた。
これから3月までがバラの植え込みのシーズン。私、去年あたりからなぜか庭のバラ栽培にはまってしまった。だいぶ知識も増えお気に入りの苗木を20本ほど注文した。気にかかるのは黒点病。頻繁にバラがかかる。葉に黒いしみがついたと思ったらみるみる広がり葉は枯れて落ちる。この病気との闘いがバラ栽培のすべて。良い花を咲かせるコツ。
「へぇー。竹でできた酢が効くの? 」
「アマチュアだねぇ、こぶ病にも効く、うどんこ病にも効く。薬で治すというより、抵抗力をつけて丈夫な草木に改善するという感覚」
聞けば大学時代、植木屋のバイトに精を出していたという。
この夏、ある疑問がわいていた。アブラムシが発生したバラの葉に消毒をすると、きれいにアブラムシは退治できるが、黒点病ができやすい。薬に頼ったあまり基礎体力がなまったように見えた。
やはりそうなのかもしれない。
竹酢。体力をつけ免疫力を高める、病気害虫をよせつけない。
井村誠。植木屋のバイトは来る日も来る日も害虫の駆除だったという。虫の好かない性格はここからきている。
2012.10.20 Kiyoshi Nishinomiya
2012
Oct 19
(Fri)
L.L.Beanのカタログ

L.L.Beanのカタログが来た。秋も深まっり朝晩が涼しい。上着が欲しいと思ったらとたんに来た。やはりL.L.Beanのマーケティング部はめざとい。
一方で、カタログのモデルさんは相変わらずお美しい。気温と心理の狭間のマーケティング戦略なんかとたんに忘れてしまう。しかも、このたびの表紙は池の橋を男女が腕を組んで歩くという、見ているだけで心温まるストーリー仕立て。思わずページをめくってしまう。
こんなシーンはなかった。
ここしばらくのカタログを思い返したが、なかった。
そうである。夏、どんな美女にでもまとわりつかれたら、暑苦しくてしょうがない。べとべと。
こうして秋を感じ取る、おととい56歳になった私である。
2012.10.19 Kiyoshi Nishinomiya
2012
Oct 12
(Fri)
母親の時事放談

コンクリートに埋設されている鉄筋が錆びたら、放っておいてはいけない。膨張を続けて亀裂を生じさせる。古いブロック塀の下ぶくれもそうやってできる。
82歳になる母親は新聞をよく読む。「世界経済の下ぶくれ現象」をこの私に説明する。時あたかも日本で開催されているIMFと世界銀行の席にでているキーワードだ。
「経済でも顔でも、下ぶくれがでたら早めに手当てしなきゃいけないねぇ」
日ごろから鉄筋の下ぶくれを気にかけている私、母親のわかりやすい解説に、ふぅーん、とうなってしまった。
「すごいねぇ、まごは。たいしたもんだよ」と新聞に目を向けたまま、また、母親がつぶやく。
さては、自分の息子と孫を比較してお説教かと黙っていたら、
「今度、アメリカの企業を買収するんだってさ、ソフトバンクの・・」と続け、孫正義。それを「まごまさよし」と読んだ。
「今、日本の男はもう一度世界で勝負しなくっちゃいけないよ」と力を込めたが、母親の時事放談。私、躊躇したが訂正せず。それも親孝行のうちとした。
2012.10.12 Kiyoshi Nishinomiya

ついに秋が深まった。今月私は56歳。次のオリンピック、リオデジャネイロのサンバのリズムがピポッパッパピー、その年には私、60歳になっている。還暦。赤いちゃんちゃんこを着て祝う歳だ。
そうした歳頃になっての戸惑い。乗っている1964年のフォードトラック。そうとう塗装が傷んでいる。カサカサ。ワックスかけてもカサカサ。コラーゲンもキューティクルもなにもない。使い古しのジーンズのようだ。これをよしとするか、それとも、いたわって新しい塗装を重ねるか。
赤さびだらけの車が走っている。ピカピカの50年前の車が走っている。ふたつにひとつ。四捨五入。60歳の戸惑いだ。
2012.10.11 Kiyoshi Nishinomiya