2012
Oct 01
(Mon)

そういえば、連絡がない。


 そういえば、落合氏からは連絡がない。天才エンジニアの落合氏。私のバイクを取りに来たのが去年の暮れも押し迫った12月29日の夜。ひょっこり現れバンにバイクを積むと、闇にまぎれて夜逃げのような素早さで帰って行った。
 この春、夏。何日かのバイク日和もあったが、まだ私のバイクは落合氏のガレージの中。エンジンをスワッピングするややこしい作業。時間がかかることはあらかじめ覚悟していた。
 10月に入った。今年も3ヶ月足らずとなった。今年中に落合氏はやってくるのだろうか。
 年をまたいだとしても私の台詞は決めてある。
 「いい仕上がりですねぇ」
 期日の催促なし。それが落合氏との暗黙のルール。
 「まあ、こんなところでひた。おやふい御用でひた。また、よろひく」
 前歯が欠けた落合氏はしゃべる時、ふぁふぁと空気を漏らす。
 天才エンジニアの落合氏との付き合い。こちらも凡人であってはいけない。

2012.10.01 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Sep 25
(The)

L.L.Bean秋カタログ


 彼岸になり秋風が吹いたとたん、L.L.Bean秋カタログが届いた。マーケティング部、戦略どおりのタイミング。その一方でモデルさんは相変わらず美しい。思わず目がとまる。おきれいですなぁ。装いがまた秋らしい。
 そうである。季節は女性のファッションでも感じ取れる。気温の変動よりもこっちの方が視覚的でわかりやすい。
 マーガレット・サッチャーは「人格は運命なり」と言った。良い人格は良い運命をもたらすんだそうだ。おぎゃあっと生まれた時に運命が定まっちゃいなかったんだねぇ。
 ならば私はL.L.Bean秋カタログに、「洋服は人格なり」とタイトルをつけましょう。また一段とモデルさんがおきれいに見えますこと。

2012.9.25 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Sep 10
(Mon)

屋根が緑化


 去年薪ストーブを設置させていただいたお宅におじゃました。煙突の点検、屋根にのぼってみたら、そこには芝生が生えていた。見事に青々と。
 「隣りの芝は青く見える」という言葉があるが、ひがみ根性抜きにしてほんとうに健康な芝生が広がっていた。もちろん日当たりはいいんだけれども、日照り続きに欠かさなかった水やり。相当努力された結果。そこに突き出た薪ストーブの煙突がまた季節外れで浮いていた。

2012.9.10 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Aug 31
(Fri)

古いフォード・トラック


 私は古いフォード・トラックに乗っている。1964年式だから50年近く前の車だ。オイルが漏れる。ラジエターからクーラント液も漏れる。窓は開かないこともある。
 そのたびに天才エンジニアの落合氏を頼る。私は彼のいいお得意さんかと思えば、あがってくる請求書が驚くほど安い。いまどき味のある車だからと特別に目をかけてもらっている。先日も車検にラジエター修理、ウィンカー修理をしてもらったが、69,000円だった。
 だから買い替えるに買い替えられない。
 魅力的な旧車はたくさんある。1945年式MG・TC。1957年式トライアンフTR3。1963年式ジャガー・Mr.Ⅱ。
 そこを我慢して乗り続けなければ仁義に反する。
 「なんと60万円の1965年式ダットサン・フェアレディを見つけたんですが、なんとか面倒みてくださいませんか」
 そんなこと落合氏には言えない。
 「日産に持っていけば、いいんじゃありませんか」
 きっと落合氏はそう答える。
 しがらみができてしまった半世紀前のフォード・トラック。私は落合氏がレンチを離すまで乗り続けなければならない。

2012.8.31 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Aug 30
(Thu)

傷だらけのコーラ


  かつて西城秀樹は「傷だらけのローラ」を熱唱した。「この愛もささげるぅ、ロォォーラァァー」
 古い家を解体するときまって出てくるのが、古いコーラの空きビン、缶。コンクリートの基礎をめくるとかならず土の中にそれらが混じっている。傷だらけのコーラ。
 昨日までの住人が生活しながら畳をめくって根太をはがして床下に捨てていたとはとうてい考えにくい。その家の建築中に工事人によって埋設されたんだろうと思う。
 しかし、なぜ、きまって出てくるんでしょう。当時の習わしだったんだろうか。一服休みの残骸であることはまちがいない。
 「隠れたる欠陥に負う責任」を私たちの業界では「瑕疵担保責任」という。この瑕疵担保責任を肝に銘じているのがこの頃の私たち。
 傷だらけのコーラを見るたびに、当時のせちがらさを感じてしまうのは私だけでしょうか。

2012.8.30 Kiyoshi Nishinomiya