2012
Jun 23
(Sat)

エミチンの発芽


    マチュ・ピチュ。15世紀インカ帝国の王族や貴族の避暑地として栄えた都市である。750人分の住居施設が用意されていた。食生活のための耕作地も確保され、そこには主食のひとつエミチンの種が蒔かれていた。計画的な食糧供給体制、のはずだった。
 エミチンの発芽率は気候変化により毎年異なっていた。ある広さの耕作地さえ確保していれば食べるには困らないと計画性を重んじていた王族・貴族はその誤差に気づかなかった。明日を予測するあまり、日々エミチンをいつくしむことを忘れていた。
 明日を計画し、日々をいつくしむ。この両立がなかなか難しい。体力、気力、知力、男は腕力、女は魅力。磨いては注ぐ。そうしてエミチンの発芽を待つ。ただ待つのではつまらないない。スリリングに待つ。

2012.6.23 Kiyoshi Nishinomiya