2012
Feb 21
(The)

戻ってきたフォード・トラックF-100


 修理に出ていた1964年式フォード・トラックF-100が戻ってきた。
 おとといの土曜日、エンジニアの落合氏から修理完了の電話。翌日の日曜日の午前中に納車のスケジュールにあった。
 朝から家で待ちわびていると、11時55分、滑り込みの午前中という時間に落合氏から電話。
 「今、出たところですが、」
 まるでそば屋の出前の常套文句にニヤリとしたが、続く次のセリフにはどう返事してよいのか困惑した。
 「走っている最中に、エンジンが止まりました」
 納車されたはその日の夕方。あいにく私は不在。戻ると、家の庭にひっそりとまっていた。ダッシュボードを開けるとイグニッションキーと請求書が入った茶封筒がひとつ。
 エンジンが一回でかかった。さっそく30キロほど走ってみた。温まらなかったヒーターが効いていた。低回転のアイドリングの息継ぎがスムースだった。シフトレバーの気になっていた上下の遊びがなくなっていた。壊れていたメーター内のランプ、ウィンカーとオイル警告灯、がつく。降りてボンネットを開けるとラジエターの液漏れがない。燃料キャップが新しい。点火コイルが交換されている。エンジンルームが丁寧に清掃されている。48歳の車が10歳若返った。
 あらためて請求書を見ると部品交換と工賃、もちろん5%の消費税込みで51500円。
 落合氏。時間にうるさい注文さえつけなければ、類まれなるエンジニアだった。

2012.2.21 Kiyoshi Nishinomiya