
ジャパンガスエナジー株式会社・東日本支店の弊社担当の植村氏はよくしゃべる。昨日も午後、新年のあいさつに訪れたのだが、38歳、ありったけの語彙を連ねて私の前に長いこと座っていた。
特に、去年暮れに公開された007の新作「スカイフォール」の段になると、映画評論家顔負けの熱弁をふるっていた。
私もお正月休みに観た。ジェームス・ボンドの生い立ちが知れたり、上司である老いた女性・Mが死んだりと、波乱万丈のストーリー。まさかMが死ぬとは思わなかった。イギリスの78歳の女優ジュディ・デンチが三代目Mを演じていた。もう台本も読めないほどの視力だといわれている。
植村氏は、このたびの007はシリーズ中でも異色な作品だという。おきまりのボンドガールらしいボンドガールにスポットが当っていないという。
スパイ娯楽作品のセオリーにかなっていない、危険な男にアブナイ女はつきものなのに氷のような美女が出てこない、次回作ではきっちりとボンドガールを出さなければならない、かつてのキャロル・ブーケなんぞ美しかったですなあ、などなど。
私、そろそろ帰宅時間となった。この男の講釈を止めなくては。私の口をついて出た台詞だったんだけれども、それを聞いて植村氏は言葉を詰まらせ、そしてしゃべるのをやめた。
「そういうことだったんですか」
と、うなづくと、コートを着て、私の部屋のドアをパタンと閉め出ていった。かなり効いたようだ。
とっさにしては、私、気のきいた事を言った。そうやって観ていた人は私ばかりではなかろうが、それにしても007が一層深くなる。
「植村さん、このたびの007、ボンドガールはMなんじゃないんだろうかねえ」
2013.1.10 Kiyoshi Nishinomiya





