
「冒険者たち」は、アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラとジョアンナ・シムカスだけではない。
34年前の私だって冒険者だった。大学3年生の冬、学連のスキー部生活を最後に翌年からは社会人となる身。虎視眈々とその策略を練っていた。
脚本家になるつもりで大学に入った。前略おふくろ様、傷だらけの天使。倉本聰や市川森一が名作を発表していた。私も、まんまと、大学のゼミの教授の紹介でTBS系「世界の子供たち」という番組のナレーション原稿を書き、一話11万1111円のギャラ(源泉引かれて10万ちょうどになる)を得るようになっていた。
一方で、コピーライターもいいかもしれん、糸井重里なんか一行書いて1111万のギャラだというじゃないか。さっそく「宣伝会議」に応募してみると、入選もした。
そうやってやまっけのある冒険者に、ちょっと天狗になっていた。
ところが、大原麗子のサントリー・オールド、レッドのCMには打ちひしがれた。
「すこし愛して、なが~く愛して・・・」
博報堂のCMプランナー藤井達朗の手によるコピーだという。こういう域に達するには、どれだけの轍を踏み続けなければならないんだろうと、腰から力が抜けた。私、冒険者には向かないかもしれない。
卒業すると、紆余曲折の末、不動産業、建築業に落ち着いた。
30余年の月日が流れたところで。
最近、あれは16世紀のイギリスのことわざと知った。
Love me little,Love me long.
そういう格言があったんだ。
してやられた。
藤井達朗は、加えて大原麗子もCMを演出した市川崑も今や故人だが、冒険者は初めから確信犯を気取る天分がなければ、なるになれない。
2013.1.21 Kiyoshi Nishinomiya





