2012
Jan 17
(The)

天才エンジニア


 私の1967式ハーレーはついに手に負えなくなった。
 何人か前のオーナーがスポーツスターをいじりにいじってチョッパーに仕立ててあるところは気にいっている。
 900ccのエンジンをキックがけ。これが苦労で苦労で。走り込みをしてもてクスワットをしても、瞬発力のある脚力を保つのが難しくなってきた。
 そんな時、怪しげな天才エンジニアが現れた。ハーレーファンの中には、便利なセルスターター付きのエンジンでは満足できない人がいるという。そんな人を探すという。そして、ふたつのエンジンをを載せ替えるという。これをクルマ・バイク用語でスワッピングという。言葉からしてなかなか怪しげな響きだ。
 その天才エンジニアのHPを覗けば、アルトサックスを溶接修理している写真が最初に出てきた。
 いつだったか電話で、「へぇー、楽器も修理するんですかい」、と尋ねれば、「はぁ?」と答える。
 よくよく見ると、アルトサックスではなくマフラーだった。美術品を修復しているかのような写真だった。
 それでも、あまりにも巧みな作業風景だったので、さては有名エンジニアの雑誌写真かと思いきや、右手の薬指に鈍く光る角ばったリング。このリング、初対面の時に私は実物を見ている。
 その道にはその道の達人。だいたいが怪しげな方だが、ここぞという時にお目にかかれる。なんともありがたやありがたや。  

2012.1.17 Kiyoshi Nishinomiya