2013
Feb 06
(Web)

七里ガ浜K邸


 神奈川県鎌倉市七里ガ浜のK邸は、一級建築士の細井ちゃんと二級建築士の私が苦心惨憺して設計した、思い出深い家だ。
 建築の敷地は家の最高高さが地域条例により8mしかとれない場所にあった。
 なのにKご夫妻のご希望は、3階建てで、しかも、屋上には広々としたバルコニーがあって・・・。どの階からも相模湾が一望できることがリクエスト。実際、その場所は江ノ電・鎌倉高校駅の坂の上にあり、人もうらやむほどの眺望に恵まれていた。
 リクエストをまともに足算をしていくと12mくらいの高さになってしまう。それを8mまでの高さに納めなければならない。
 各階の高さを縮めましょう、などと細井ちゃんの過激な発想もあったけれども、やればなんとかできるものだ。リクエストはぴたりと納まった。
 2009年の春のこと。もう、4年も経つわけですか。早いですなあ。
 4年もあれば次のオリンピックはくるわけで。大学は卒業できるわけで。
 これから4年経ちますと、おお、私は60歳。還暦ですよ。

2013.2.06 Kiyoshi Nishinomiya

2013
Feb 02
(Sat)

井田さんのオトテン


 井田さんの二世帯住宅は3階建てだ。建築基準法に2階建て用の構造では通らず、より強固な基準で作ることが求められる。だから、コストが、うんと高い。
 加えて井田さんの家の3階は贅沢な防音室仕様。親世代のご主人がバンド仲間と練習する部屋になる。防音ドア、壁、天井の三拍子。ワルツ。またコストが、うんとはった。
 建築中ではあるけれど、親世代のご主人はその3階にのぼり、試しに、うわっうわっと、叫んでみたが、階下にいた親世代の奥さまにその狂喜ぶりは届かなかったという。
 特に天井材・商品名「オトテン」の音の吸収率が優れている。シャットアウトするのではなく、スポンジのように吸い込む効果。
 親世代のご主人はその効果に感激のあまり、自らのバンド名を「オトテンバンド」と改名し、ほぼ3階から降りない生活を考えているという。

2013.2.02 Kiyoshi Nishinomiya

2013
Feb 01
(Fri)

Tさんの3rdプラン


 
 


 Tさんへの3番目のプランは没になった。
 ラップサイディングを基本とし、2階の張り出しの部屋を、柱を浮き彫りにしたチューダー様式に飾った。一級建築士の細井ちゃんと二級建築士の私は自信があったが、Tさんの奥さまが、なんとなくログハウスぽい雰囲気に首をかしげたからだった。
 細井ちゃんは狙いをはずしたことに、思わず、ごくりと、ツバをのみこんでいた。
 まだ3番目のプランでしょ、5番目、6番目あたりで決めていただければ。ねぇ、Tさん。
 と、私はTさんご夫妻と細井ちゃんを広角に見たが、細井ちゃんは体を硬直させたままだ。
 この差である。細井氏は一級建築士だが、私は二級建築士と宅地建物取引主任者のセット。
  私の方が年収が高い。
 A物件はお気に召しませんでしたか、いや実はね、とっておきのB物件があるんですが、それはまたご案内しましょう。
 不動産屋的あいまいさ。
 容積率、建ぺい率、天空率、斜線制限などに苦心惨憺の細井ちゃん。彼も宅地建物取引主任者の資格を取ったら、心も軽くなるはずだ。

2013.2.01 Kiyoshi Nishinomiya

2013
Jan 30
(Web)

Yさんのセカンド・プラン



 Yさんのセカンド・プランがまとまった。
 Yさんご夫妻の家の設計を始めたのが去年の12月8日のこと。いつものごとく、茅ケ崎南湖モデルハウスで一級建築士の細井ちゃんと二級建築士の私と施主様と集い、スタートした。
 細井ちゃんは、こういう時必ず自ら用意した「ヒアリング・シート」に個人情報を書き込むところから始める。
 ご家族の構成は? 希望の部屋数は? 車は何台?  将来親御さんとの同居は予定していますか?
 横に座っている私、このやり取りを幾度となく聞いているんだけれども、細井ちゃん、もっと他の切り口ございませんかねえ。
 私なんか、どうしてこの二人が出会って結婚したんだろうって、それが一番知りたい。
 だから、時々、
 「おふたりのなれそめは?」って、口をはさむんだけど、細井ちゃんは決まってムッとする。
 とはあれ、セカンド・プランがまとまった。
 3月には建築確認申請か。

2013.1.30 Kiyoshi Nishinomiya

2013
Jan 26
(Sat)

カバードポーチの玄関


 鈴木さんの家が竣工する。
 引っ越しは今度の日曜日に決まった。最後の仕上げにおおわらわ。
 鈴木さんの家はカバードポーチの玄関の家だ。アプローチ階段を上り、渡り廊下のように長い屋根付きのデッキ、これをカバードポーチと言うんだけれども、ここをわざわざ通って玄関に入る。家から出入りするのにちょっとした儀式のようなアクションすら伴う。
 敷地のもっと手前に玄関を位置した方がいい、いや、こういう手順を踏んで入っていただきたい。一級建築士の細井ちゃんと、二級建築士の私でさんざんもめた。どっちがどういう意見をいって軍配が上がったのかはもうすっかり忘れてしまったが、行司は施主の鈴木さん。こういうスタイルに落ち着いた。
 行司、軍配といえば横綱大鵬。先だって天国から呼び出しがありました。
 

2013.1.26 Kiyoshi Nishinomiya