
八木さんの奥さま・憲子(のりこ)さんのお気に入りのステンドグラスが現場に届いた。さっそく埋め込んだ。八木さんのステンドグラス、バラをモチーフしたもの。憲子さんが湘南モールのインテリア雑貨屋さんからが買ってきたものだ。
かつて私、30数年前の今頃、「クリスマスツリー型のステンドグラスランプ」を作ろうと思い立ったことがあった。制作のHOW TO本を買ってきたが、ランプの傘の展開図を型紙におこすところを読んだだけで、挫折した。とっても難しい。緻密、根気、気力。そんなもんを必要とする作業だった。
当時、まだ大学生だった私、キャンパスでも誉れの高い女性と中庭で初めて会話をする機会に恵まれた。その彼女が、「もうすぐ、クリスマスですねえ」と言うもんだから、私、すかさず「おれさ、クリスマスツリーづくりの達人と言われててさ」とでまかせをいったら、彼女、乗ってきて、
「そうなの。いままでどんなツリー作ったんですか?」
と問い正すじゃありませんか。
困った。ひたすら話を続けるしかない。
「そうだねえ、幼稚園の時に折り紙で作ったツリーが初めてで、小学校に入ると紙粘土で作ってさ、中学じゃあ、木工のツリーだったよ。それで、・・・」
「それで?」と彼女。
「それで、高校に入るといよいよ名人芸の域に入ってくるわけよ」
盛り上がった会話を無理引っ張らざるを得ない。
「今年は、素材はガラス。ステンドグラスのツリーなわけで」
「へえー。ティファニーランプみたいなの?」
「そうそう、そういうやつ。出来たら、もらってくれるかい?」
ここまではよかった。危ない脱線をかわして、アーティスティックな期待感でつなげた。
そして、HOW TO本である。わずか5分の挫折。だから、彼女との仲も深まることはなかった。
今日この時代、施主の方がステンドグラスを持ち出すと、私、決まって過去を思い出す。
2012.11.15 Kiyoshi Nishinomiya





