
サードギアに入ったまま動けなくなってしまった1964年式のフォード・トラック。故障発生から10日目、ようやくお待ちかねの天才エンジニアの落合氏が出張修理にやってきた。
仮りに直った。あくまで仮り。だから公道を走るまでには程遠い。モデルハウス内のじゃまにならない場所に移動できただけ。
落合氏に故障の原因を聞くと、
「もう古いからですよ」、と明確にもそっけない答えが返ってきた。
そりゃあ、わかってるが、古いから今後どう本格的修理がなされるんでしょ。なんたって相手は落合氏である。丁寧な口調で再び尋ねた。
「年内の修理はもう混雑しているんでございましょうねぇ」
「もういっぱいです」
「では、年明けまでは、このトラックはこのままの場所に置いておきます」
「そうですねえ。再来週あたりに取りにまたきます」
やはり、天才エンジニアである。落合氏の頭の中では再来週はもう来年である。
「わかりました。車の搬出がしやすいように、お正月の角松はよけておきましょう」
落合氏とのお付き合い、こちらも凡人であってはいけない。
2012.11.29 Kiyoshi Nishinomiya





