
そういえば井村誠(いむらまこと)が言っていたことを思い出した。
「素人のおまえがバラのお世話なんかまだ早いね。どうしてもと言うんなら青いクレマチスから植えるんだね」
去年の秋、熱海であったプロパンガス組合の宴会の席でだった。お互いお酒も相当飲んでいた。きれいな芸者のお姐さん方もいた。こんな会話が弾むはずもなくそこで話題は途切れていたが、「青いクレマチス」が記憶の糸に絡んでいた。
先日、注文するバラの苗木をピックアップしていたら青色系のバラに目がとまった。バラといえば赤、ピンク、白が一般的。青いバラは元来性質が弱く初心者には向かないとの注釈。一般的な色のバラに青いクレマチスを混在させるとバラの庭が引き立つとあった。青い色素はバラの成長と相性が悪いのか。
ちょこざいなのは井村誠だ。かくも先を読んでいるとは。
ほくそ笑む井村誠の浮かんだ顔を消すため、私は青色系のバラ「インディゴレッタ」を注文票に書いた。
2012.10.20 Kiyoshi Nishinomiya

いつか井村誠(いむらまこと)が言ったことを思い出した。
井村誠とは同い年のプロパンガス販売店のあととりである。かれこれ20年旧知の間柄だが、顔を合わすたびにお互いけなし合っている。私だけじゃない、おおかたの人間ともそういう仲だ。
その井村誠が、「バラの黒点病には竹酢(たけず)が効くよ」と言っていた。
これから3月までがバラの植え込みのシーズン。私、去年あたりからなぜか庭のバラ栽培にはまってしまった。だいぶ知識も増えお気に入りの苗木を20本ほど注文した。気にかかるのは黒点病。頻繁にバラがかかる。葉に黒いしみがついたと思ったらみるみる広がり葉は枯れて落ちる。この病気との闘いがバラ栽培のすべて。良い花を咲かせるコツ。
「へぇー。竹でできた酢が効くの? 」
「アマチュアだねぇ、こぶ病にも効く、うどんこ病にも効く。薬で治すというより、抵抗力をつけて丈夫な草木に改善するという感覚」
聞けば大学時代、植木屋のバイトに精を出していたという。
この夏、ある疑問がわいていた。アブラムシが発生したバラの葉に消毒をすると、きれいにアブラムシは退治できるが、黒点病ができやすい。薬に頼ったあまり基礎体力がなまったように見えた。
やはりそうなのかもしれない。
竹酢。体力をつけ免疫力を高める、病気害虫をよせつけない。
井村誠。植木屋のバイトは来る日も来る日も害虫の駆除だったという。虫の好かない性格はここからきている。
2012.10.20 Kiyoshi Nishinomiya