2012
Oct 15
(Mon)

田中さん、新しい生活のスタート


 22歳の施主・田中さんの新築工事が終了した。奇をてらわず、かといって平凡でもなく飽きのこない家。ご夫婦、お子さんふたり。4人家族の新しい生活がスタートする。
 さて。住宅版エコポイント制度である。景気浮上策にと去年までずいぶんと騒がれた制度だ。車にもあった。エアコンにもあった。かくして住宅にもあった。田中さんの家も申請を行うことができた期間内、お得なポイントがついてきた。それ相当の商品券が田中さんの手元に届くはずだった。だが、3.11の震災復興支援策とあい重なりその商品券は被災地内のデパート・お店でしか使うことができない。あっちまで車で買いに出かけるか、田中さん。
 「ちょっと遠いです」
 仕事のスケジュールを考えれば、足が向かない。
 「他になにか選べませんか」
 と聞いてくる。パソコンからアクセスして好きな商品を選択することはできるが、田中さんの家にパソコンはない。
 「なんでもいいですよ」
 あくまで謙虚な22歳の田中さんだ。
 そこで弊社女性社員・田辺が商品群一覧表から選んだ。
 米、味噌、醤油。弊社女性社員・田辺は実用重視でこれらを田中さんの新居に宅配される手続きをとった。
 米、味噌、醤油。どちらが被災地かわからない。 

2012.10.15 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Oct 13
(Sat)

井田さん新築工事


 井田さんの新築工事が着々と進んでいる。二世帯用に建て替えたのがこのたびの家。前回の家はもちろん一世帯用だった。築22年たったところで手狭になった。子世代用に土地を求めて家を建てるかどうかとさんざん迷った挙句、惜しげもなく取り壊して新築計画。ちょうど親世代の住宅ローンも完済されていたことも大きな要因となった。
 かくして二所帯三世代大家族の3階建てが実施されたわけだが。しかし、人の数だけ言い分が備わる。
 寝室続きの6畳くらいのクローゼットが欲しいのよ。僕の部屋の中には階段をつけてね。洗濯を干す場所には雨がかからないようにしてほしい。私はルーフバルコニー脇の部屋に住みたい、あっ、それと、バンド仲間のためにも防音室にしてよね。夜、星が見たい。駐車場は車3台よ。自転車は家族の人数分置きますから。3階までのエレベーターが欲しいねぇ。しかも安く。
 家とはそういう器である。夢が詰め込まれる場所である。だから日ごろどんなに仲の悪い家族でも、建築中はとても仲がいい。結束を固めて工務店に当たってくる。私、経験上、よく知っている。

2012.10.13 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Oct 12
(Fri)

母親の時事放談



 
 コンクリートに埋設されている鉄筋が錆びたら、放っておいてはいけない。膨張を続けて亀裂を生じさせる。古いブロック塀の下ぶくれもそうやってできる。
 82歳になる母親は新聞をよく読む。「世界経済の下ぶくれ現象」をこの私に説明する。時あたかも日本で開催されているIMFと世界銀行の席にでているキーワードだ。
 「経済でも顔でも、下ぶくれがでたら早めに手当てしなきゃいけないねぇ」
 日ごろから鉄筋の下ぶくれを気にかけている私、母親のわかりやすい解説に、ふぅーん、とうなってしまった。
 「すごいねぇ、まごは。たいしたもんだよ」と新聞に目を向けたまま、また、母親がつぶやく。
 さては、自分の息子と孫を比較してお説教かと黙っていたら、
 「今度、アメリカの企業を買収するんだってさ、ソフトバンクの・・」と続け、孫正義。それを「まごまさよし」と読んだ。
 「今、日本の男はもう一度世界で勝負しなくっちゃいけないよ」と力を込めたが、母親の時事放談。私、躊躇したが訂正せず。それも親孝行のうちとした。

2012.10.12 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Oct 11
(Thu)

戸惑い



 
 ついに秋が深まった。今月私は56歳。次のオリンピック、リオデジャネイロのサンバのリズムがピポッパッパピー、その年には私、60歳になっている。還暦。赤いちゃんちゃんこを着て祝う歳だ。
 そうした歳頃になっての戸惑い。乗っている1964年のフォードトラック。そうとう塗装が傷んでいる。カサカサ。ワックスかけてもカサカサ。コラーゲンもキューティクルもなにもない。使い古しのジーンズのようだ。これをよしとするか、それとも、いたわって新しい塗装を重ねるか。
 赤さびだらけの車が走っている。ピカピカの50年前の車が走っている。ふたつにひとつ。四捨五入。60歳の戸惑いだ。

2012.10.11 Kiyoshi Nishinomiya

2012
Oct 09
(The)

八木さんの新築


 八木さんの新築工事が着々と進んでいる。グレーホワイトのラップサイディングも貼られニューイングランド様式の家が足場越しに見える。完成されると、そつのない家になる。
 映画「蒲田行進曲」には隙間がない。1982年公開。もう30年前の映画なのにさっぱり色あせていない。風間杜夫、松坂慶子、平田満らが織りなすあの映画には、飽きさせるエピソードがまったくない。
 ライバル橘に看板スターを譲るまいとする銀四郎。「昨日、専務に呼ばれてよ。来年のカレンダーの一月は、銀四郎、おまえで行くからって言われてさ」
 銀四郎の子を宿したために捨てられ、ヤスといっしょなった落ち目の女優小夏。「今夜は、あんた、帰ってきてほしいのよねぇ」
 階段落ちのヤス。「銀ちゃん、かっこいぃ」
 どこをとっても名場面名セリフの連続。観客をして飽きさせる隙間がない。大仕掛けのハリウッド映画だってかなわない。
 八木さんのお宅もそうしたコンテンツがいっぱいいっぱい。まるで「蒲田行進曲」のような家になる。

2012.10.09 Kiyoshi Nishinomiya